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五年。

2009年11月16日、東京オペラシティ・リサイタルホールで開催の
「第26回日本現代音楽協会作曲新人賞本選会」にて《葉桜》が初演され、
今日で5年が経ちました。

《葉桜》は、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる四重奏曲で、
旬が過ぎたように思われている音列技法を、私なりに再評価しようと試みた作品でした。
過去の名作が既にある室内楽の編成で作曲するのは今も大好きですが、
公の場で初めて演奏された拙作が本作だったことや、
後日、音楽評論家の西耕一氏が『音楽現代』2010年1月号(p.175)にて、
「常識的奏法を出ない範囲でシャリーノに近寄るよう」と書いてくださったことは、
今にして思えば、その後の私の態度を決定付けたかも知れません。

ブログに何度も書いておりますが、
昨年の「おおすみ-かごしま芸術祭2013」に招待アーティストとして参加したことで、
他人の評価は別にして、私の作曲は変わり始めました。
ピアノ10台作品《Piano Function》を作曲・初演出来たことは勿論、
様々な分野の素晴らしいアーティスト達を目の前にしたトークセッションで、
何かの記事で読んだような邦人作曲家のテンプレ回答しか出来なかったことは、
「己の思想、哲学、美学を鍛えなくてはならない」という課題を突き付けてくれました。

私のスコアは「叩き台」のようなもので、特にソロやデュオのような小編成では、
演奏者にイエローカード寸前くらいの反則を期待することが少なくありません。
敢えて矛盾を記すことで、確定されたスコアからの選択を促すこともあります。
これが、作曲者の単なる責任転嫁にしか映らないクオリティでは本末転倒でしょうし、
事前に時間や労力を要する、現代の音楽家の労働にそぐわないようなプロセスですが、
芸術祭以降、より傾倒するようになったアプローチの一つです。

ただ、それ以前の自分に確固たるものが無かった、という意味でも、
これが自分の世界だという確信の下、新しい出発をした実感までは未だありません。
どんな演奏家や機会のために作った新作でも注目して頂けるような、
作曲家としての価値もありません(これはこれで健全でしょうし、気軽ではあります)
機能や関数、儀式といった意味を持つ単語である「Function」が、
私の音楽の態度を端的に表していることを芸術祭で発見した後、
久保禎先生の「幾何学的にして耽美な固有の空間」という批評も参考にしながら、
オーバーフロウのようにとにかく作り続けて、一作ごと、模索する毎日。
目下の課題の一つは、複数の時間のレイヤーを持ったアンプラグドの独奏曲を、
カオスでも簡潔でもない状態で成立させることが出来るか。
もっと多層的・多元的な音楽を、拙作でも聴いてみたいのです。

私の耳や感性が大味なだけかも知れませんが、
どんなに刺激的なアイデアでも、聴いて面白いと体感出来ない音楽は好きになれません。
五感を活用しなくては楽しみに至らないような時代において、
実際はそこまで純粋だと云い切れないものの、
聴く喜びに特化して表現を追求出来る音楽は、稀有な分野だと捉えております。
複合的に掘り下げる要素を持たない、聴覚だけに頼ったような芸術は、
表現領域において存在価値を認められない傾向が、既にあるのかも知れません。
時間の経過の中で、差異と反復くらいしか思考・実践し得ない音楽にこだわるのは、
再帰性のループに私も囚われている証拠だと云えるでしょうが、
音楽の所在を確かめつつ、これからも取り組み続けて参ります。

最後になりましたが、一般大学すら出ていない独学で、田舎暮らしの私が、
作品ではなく、出自などを理由に一部から疎外されつつも作曲活動を続けられているのは、
演奏してくださる皆様、応援してくださる皆様のおかげに他なりません。
先日、とある現場で初めて出会った演奏家同士が、
拙作の演奏経験があるという共通点で打ち解けたらしく、何だか嬉しかったです。
「とにかく私は聴くことのできる機会を与える。来ないのは、その人の責任です」
という松平頼暁氏の発言(『NEW COMPOSER』Vol.10、p.53)ではありませんが、
ライヴに限らず、お聴き頂ける機会をもっと多く作れるように努めますので、
今後とも宜しくお願い申し上げます。

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