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敬意。

(批評などではなく、いつも通りの自分語りです)

かごしま県民交流センターで開催された「鹿児島国際大学 第13回教員定期演奏会」にて、
作曲家、久保禎先生の作品が再演されました。

久保先生は鹿児島県鹿屋市のご出身。
日本を始めとする東アジア固有の美意識に基づく作曲に取り組まれていて、
東アジアの音楽家との交流などにも尽力されていらっしゃいます。
また、後進の指導にも精力的で、私も師事している訳ではないものの大変お世話になっております。

今回演奏されたのは2作品。
フルートとマリンバのための《リズム・ソバージュ》は1993年、
ピッコロとピアノのための《舞桜図》は2012年の作品で、
約20年の開きが作品に影響しているのか、その辺りも楽しみの一つでした。

《リズム・ソバージュ》は、
「第3回ヨンナム国際現代音楽祭」の招待作品となるなど、各地で再演されている作品です。
私は録音で親しんでおりましたが、ライブで拝聴するのは今日が初めてでしたし、
フルート:浅生典子さん、マリンバ:川田絵里子さんという組合せも興味深かったです。

アクセントの周期がずれる同音連打に数種類のアルペジオが挿入されるマリンバと、
東アジアを想起させるようなフレーズのフルートが絡み合います。
冒頭のフルートは小節線を持たず、拍を数えるのとは異なる時間の感覚があり、
常にほぼ一定のリズムを刻むマリンバと対立しているようにも聴こえますが、
本作では弁証法的構成が取られていないとのことですので、
止揚することは無く、共存する関係のまま曲が進行していきます。

スコアの印象も含め、ミニマルな要素が前面に出ているように感じられますが、
それよりも、東アジアの音楽の在り方を希求する態度が剥き出しになっている所が、
この曲の本質ではないかと私は考えます。
楽器編成や、敢えて機械的なリズムを用いることによる異質性、ヘテロフォニー。
マリンバ一つ取っても、打鍵する音と管を通った音の差異が明確で、
これだけでもヘテロフォニーを形成しているように聴こえました。

《舞桜図》は、ピッコロ:浅生典子さん、ピアノ:久保禎先生による演奏。
昨年、鹿屋市で開催された「浅生典子&片倉聖デュオ・リサイタル」で初演された作品です。
この公演は私も共同主催者の一人でしたので、こうして客席で聴くのは初めて。
久保先生ご本人によるピアノも注目でした。

二人の演奏家は、それぞれ与えられた素材を即興的に組合せながら演奏していきます。
日本の音階ばかりが使われている訳ではないと思いますが、
楽器編成の妙なのか、ランダムに鳴っているような音が舞い散る桜花を連想させるためか、
日本画を見ているかのようなフィクションの世界が繰り広げられます。
美しさの余り、演奏家自身が陶酔に陥りそうな内容ですが、
スコアに指定された時間配分が絶妙なのか、理性を失わない、透徹された美が実現されます。

具体的なイメージがあるなら確定した記譜法を取るべきではないかと、
初演前の練習に立ち会った際は疑う気持ちもありました(普段から即興に否定的なため)。
でも、このスコアでなければ現れない美しさが確実にあるのです。
同じものを二度とは聴けない儚さ故の美しさもあるのでしょうが、
正直な所、そこまでの記憶を持って次の再演を聴き、その差異を楽しむことは有り得ないと思います。
それよりも、作曲者が思い描くビジョンを演奏家がある種の極限状態で共有しようと努め、
結実した姿としての音楽を聴くことで、作曲家の主情と共に音楽の美しさを堪能することが出来る。
作曲上の専門的なプロセスを知らずとも体感出来る命の交感ではないでしょうか。
新奇の音楽を求めるためではない偶然性が、ここにあります。
きっと技法の探求だけではない、テーマ性や内容を重視する姿勢で作られたのでしょう。

余談ですが、先生と出逢って、7年ほど経ちます。
アジア的な音楽こそが日本人作曲家が取り組む音楽だと信じ込んでいた私ですが、
先生との交流を通じて、寧ろ、東アジア的な音楽観や主情を表現する音楽から距離を置くようになりました。
情けない話ですが、先生の音楽に圧倒され、これには敵わないと感じたためです。

2010年の《椿》や《in the dark》までは、アジア的なものに未練を残した音楽でしたが、
同年の《-ade》で、ようやく吹っ切れることが出来ました。
昨年《スパークリング》や《六花》を先生に「幾何学的にして耽美な固有の空間」と評して頂き、
作曲家としての自分の存在感を、少しずつ認められるようになりました。

昨年、先生への敬意を込めた《虹蛇》という曲を作りましたが、
作曲家として成長する姿を示し続けることが、感謝の気持ちを伝える一番の手段だろうと思い込んでいます。

とっても素敵な音楽を体験することが出来ました。
先生が今後どのような音楽を紡がれるのか、
一人のファンとして、現代音楽の作曲家として、心より楽しみに致しております。
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